他人事として考える

『危機の時はどうしても判断がおかしくなる。その判断の狂いが、さらに被害を拡大するということが実に多い。例えば食品偽装問題が世間を騒がせた時のことを思い出していただければ、思い当たることがたくさんあるはずだ。テレビを見ながら、どうしてあんなことを言うのだろうとか、そういう態度を取るのかと、日本中の人が首を傾げたに違いない。

 テレビのこっち側にいれば、つまり客観的に考えていれば、誰にだってわかる簡単なことが、わからなくなる。そして、傷を広げてしまう。危機そのものからの被害よりも、その判断の狂いから生じる損害の方が遥かに被害が大きいといっても過言ではないだろう。

 その損害を防ぐためには、自分はテレビのこっち側にいる人になって、客観的に見ることである。危機とか、ピンチとかいっても、他人事として考えれば、それほどのことではない。悩んでいるときも、他人の目から見れば、だいたい人間の悩みなんてたいしたことはない。

 悩んだり、困ったりしたときは、自分をいったん突き放してみる。そしてあくまでも他人事としてその対処法を考えること。それが、危機への最善の対処法である。』三木谷浩史氏の言葉である。

 言うは易しである。そう簡単にできることではない。いろいろなことがある度に自分のことを他人のこととして見・考え・判断できるよう日頃から訓練しておくことが大切である。それがいざという時に役立つのである。