本物に接すること

『一つのことに人生をかけてきた人の体験というのは、万巻の書物に勝る教師である。特に、自分とは職業の異なる人、別の世界に生きて苦労している人の話は、得難いものがある。その意味でも本物に接すること、これが大事である。

 人間関係だけでなく、芸術でも、本でも、一流と言われているものに、難解でも、距離があっても、ふれていく方が良い。時間がないから、How toものを読んだり、ダイジェストで間に合わせるのではなく、貴重な時間だからこそ、本物にふれる、古典に挑んでいくようでなければ、得るところはない。

 例えば、刀を鑑る目を養うとするなら、よい刀を、名刀をみろ、二流・三流の刀をいくら見ても勉強にならない。名刀に接する機会を多く持つことによって、本当の意味での鑑識眼が養われてくる。人間の教養というか、人間性そのものというか、そういったものを向上させていく方法は、所詮、「本物」から学ぶ以外にない。』

 良いもの、一流のもの、本物に接してくことによって、見る目が養われていく。その労を厭うてはならない。