「緊張」が人間をつくる

 『オリンピックで金メダルを五つもとった天才選手だって、試合の前の日に二時間しか眠れなかったという。この「緊張」が人間をつくっていく。真剣勝負を経験すると、顔つきが違ってくる。「勝負やけ」がするのである。「緊張」の中で学ぶことは、「平時」の数千倍、数百倍なのである。「緊張」の中でこそ、これまでのあれこれの「教え」が、自分の身体の力でよみがえる。「そうだったのか」「これだったのか」と思う。これは「平時」では、決して得られないことなのだ。大関横綱になるとそれなりの「緊張」があって、ひとまわり強くなるように、研究授業の「緊張」をくぐりぬけることが、教師の腕をみがくのである。』向山洋一氏の言葉である。

 「緊張」が人間を作っていくのである。自身の全身全霊を傾けて、取り組んでいるからである。そこには、一瞬の迷いもない、やり抜く自分がいる。「平時」には、決して出ることはない力である。だから、「緊張」の中で生きている人間とそうでない人間とでは格段の違いが出てくるのである。