何が大切か

 『剣の道を志す若者がある道場に入門する。ところが稽古はほんのいっとき。拭き掃除をはじめ身の回りの細事に明け暮れする日々は、期待した武士道の修学とは程遠いものであった。「なぜか」と師に迫る。静かにかんで含めるように返ってきた言葉は、「拭き掃除も所持品の整理も、その一つ一つは決して大事ではないけれども、それらを統合したところにその人間の「生き方」が顕れるのだ。とるにたらぬ日常瑣末なことが、実は最も大切なのだ。」というものだった。剣の達人にはなりえても、人間の達人にならずしては剣を生かすことはできない。』山本周五郎氏の言葉である。

 ついついどうしても剣の稽古のこと、即ち目先のことにとらわれてしまいます。人として大事なことを一つ一つ身につけていく中で、剣が生きてくるのです。今はそれがわかるようになりました。