小さな事を大切に

  『二宮尊徳が若い時一軒のささやかな家を持つようになって、わずかながら田畑も持てた。その畑を耕そうとしたらクワが壊れてしまったので、隣のおじさんのところへクワを借りに行ったところ、隣のおじさんはいま自分も畑を耕して菜の種をまこうとしている所だから、それが終わらなければ貸せないと言いました。その時普通の人なら、「それじゃ、終わったら貸してください。」ということで終わるのですが、尊徳はさすがに違います。「私が代わって、その畑を耕しましょう。菜の種も出してください。私がそれをまいてあげます。」と言って、隣の人の畑を耕して菜の種をまいてあげました。そうしたら隣の方は、「これから以後は、クワに限らず何でも困ったことがあったら言ってきなさい。何でも用立ててあげる。」と言ったのです。「ああそうですか。それじゃ、後でまた貸してください。」で終わる人が世の中には大変多いのですが、こういうふうに、一歩踏み込んで人を喜ばすことがいかに大きな力を持つかということです。クワの道具を貸してもらうというのは、いかにも小さいことのように見えますが、実はそうではなく、大変大きな力を持っているのです。』

 普段の仕事の中で目にする光景ですが、こういう一歩が踏み出せるかどうかが人の協力を得られるかどうか、本当の人との繋がりができるかどうかにかかわってきます。こうした一歩踏み込んだ人への配慮を一つ一つ積み重ねていくことが大切です。