賢明の人に愚痴はない

『「賢明の人に愚痴はない」のである。

六色の絵の具しかかってもらえなかったその子は、十二色や二十四色の絵の具を持っている友達を羨ましく思った。が、思い返して色を混ぜることによって新しい別な色が生まれることを知った。工夫し、打ち込んでいる内にその作業が楽しくなった。付加価値を作り出す興味にとりつかれた彼は、六色を中心に独特の色を生み出し、その色を生かして絵を描いた。そして一流の画家に大成した。「もし親が私の言いなりに十二色や二十四色を買い与えてくれたら、今の私はなかったでしょう。」と彼は微笑した。乏しい条件を足場にして、より良い条件を自ら生み整えていく。何もかも揃ったのでは創造心は育たない。ひたむきさ、懸命さが彼を偉大にしていったのである。』

 条件が揃っているからと言って、実を結ぶわけではない。条件が揃っていないからと言って、実を結ばないわけではない。次元は違うが、ノーベル賞をもらった人たちでさえ、環境が整っていない中自分で装置を作って結果を出した人は何人もいる。どんな環境におかれたとしてもその環境の中で、どれだけ本気で打ち込んできたかである。賢明の人に愚痴はないのである。